2007年6月30日土曜日

黄金比 Divine Proportion

  黄金比という言葉が最近までCMでも使われるなど流行っていましたが、もともとは小説『ダビンチ・コード』の訳書で使われたフレーズです。この小説を原書で読んでいた私は、日本で大ヒットして翻訳版を覗くまで“黄金比”と訳されている事を知りませんでした。実際は、“divine proportion”直訳すると神から授かった比率という意味なのですが、divineは特定の神を指すのではなく、単純に「神」という意味として使われます。例えばアメリカやイギリスなどの国で、クリスチャンが会話の中で通常「God]と言えばイエスキリストを暗に示し、divineとは言いません。

  なぜ黄金比という言葉に訳されたのかはともかく、小説「ダヴィンチ・コード」は、実はとてもシンプルな英語で書かれています。フィクションとノンフィクションを織り交ぜ、展開もすこぶる良く、週末に徹夜して読んでしまいました。ぜひ、原書を読んでみて下さい。分からない単語はとばして、前後の脈略からストーリーをくみ取りながら読み進めることが、英語で小説を読む際のコツだと思います。何度も出てくる単語のみ辞書で調べ、小説を英語で楽しんでみて下さい。著者が“divine proportion”に魅了された事が小説の随所で分かります。読んだ私も、宗教とは全く別に、敬虔な気持ちになりました。


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2007年6月27日水曜日

旅先での出会い

  掲載中の小説【真珠湾】~Lost in Seven Years~では、主人公のアメリカ人青年クリス(Christopher略Chris)が過去7年の間に目をそらし続け、悔やんでいる事にけじめをつけようと日本へ来る、というところから始まっています。休暇を楽しむ旅行であっても、ふと自分を振り返る瞬間、或いは全く予想もしなかった事に直面し、今まで考えたことの無かった何かを知る、というような経験は時に起こると思うのです。

  随分前の事ですが、私がシンガポールへ友人と一緒に旅行した時、とても考えさせる体験をしました。シンガポールは想像以上に発展している近代国家で、普段、都心で忙しくしている私達にとっては、あまり安らぐ事ができませんでした。3日目位だったと思います。フェリー乗り場を見つけた私達は、行き先が離れ小島だと知り、ホテルに戻り日常使うものだけを持ってフェリーに乗ったのです。
  その島には、オープンしているものの、外から見るとベランダはまだ建築中の部屋がある、という新築中のホテル一軒しかありませんでした。それでも、自然にあふれたその島がすっかり気に入った私達は、帰国するまで滞在する事にしました。
  ある朝、まだ夢の中の友人をそのままに、一人で海岸を散歩しに行くと、遠朝の海の中に立ち網を引いている黒く日焼けした老人がいました。私がその作業を何とはなしに見つめていると、彼は網と小さなバケツを持って浜へ戻ってきました。
  "Good morning"と、私。彼は、にっこり微笑んで"Good morning"。バケツの中には数匹の魚。今日はあまり獲れなかったのかと聞くと、その老人は、これで充分なのだと言いました。太陽と家族、それで充分、そしてその家族が必要な分だけの魚なのだと。私はひとり恥ずかしい思いをしました。もっと獲って売ればそれだけ収入になると自然に考えたうえで「今日はあまり獲れなかったの?」と尋ねたからです。
  必要な分だけ。太陽と家族。それで充分だと言った老人から、私は『お金お金』の社会に生きていることを痛く感じたのでした。

  その島で、もう1つ出会いがありました。滞在していたホテルは、東南アジアから出稼ぎに来ているたくさんの人達が働いていました。それも、ほぼ私達と同年代の20代前半(当時)の若い男女が多数でした。レストランで働く1人のインドネシア人の女の子、ティナと親しくなりました。私は、この島の人たちが食べに行くおいしいお店はないかと尋ねると、連れて行ってくれるというので、夕方ホテルの前で待ち合わせをしました。時間に行くと、小さなトラックの荷台に他のホテルの従業員も乗って、私達を待っていました。トラックは、道無き道をどんどん進み、誘拐されるのではないかと友人はかなり怖がっていたのも無理は無く、周りはまるでジャングルのような熱帯林でした。
  すると突然、視界が開け、真っ青な海と近くに小さな艀。その先に藁の様な物でできた屋根と木で造られた囲いが見えました。トラックが止まり、ティナがあそこよと言って、みんなが次々にトラックを降りていくので、私達は「うそでしょっ!?」と思いながらもその『お店』とやらに向かったのです。
  その『お店』には大きなテーブルが1つと小さな調理場。1人の男性が営んでいるようで、私達が到着するといきなり海に入って魚を獲り始めました。そして、そのまま料理が始まり、どんどん皿に盛って運んでくるのです。
見たことも無い魚の中には熱帯魚のような虹色のものまで。みんないっせいに食べ始め、私達もおずおずと口に運ぶと、これがなんとも美味。メチャクチャにおいしい。美しいサンセットを眺めながら『お店のテラス』で夕食を堪能したのでした。

  帰国する朝、前夜ティナが設けてくれたパーティーですっかり夜更かしした私達はセットしたモーニングコールもまるで聞こえず、熟睡状態。いきなり部屋のドアが開き、ティナの叫ぶ声。“You gonna miss your plain”
全員飛び起きました。飛行機に乗り遅れると心配して、ティナは部屋まで起こしに来てくれたのです。ティなの側にはホテルのクロークが立っていました。
  シンガポールまでフェリーで戻り、急いでホテルをチェックアウトして空港に向かい、本当にぎりぎりで搭乗に間に合いました。彼女は、ティナは、私達と同い年。彼女は出稼ぎで朝から夜まで働いて、のんきに旅行にやって来た私達に、ともかく親切でフレンドリーでした。帰りの飛行機の中で、私達は彼女や他のホテルで働く同年代の人達との交流を通して、意識はしてなくても自分たちはどこか与えられた環境に甘んじて、高慢になっているのではないかな、と話したりしていました。

  今まで旅した先で、本当にいろいろな出会いがありました。小説【真珠湾】~Lost in Seven Years~のクリスもまたそんな旅になります。
  バイリンガルと日本語で言うと、ちょっと実際の意味とは違って響きますが、Bilingualとはあくまで二カ国語で、という意味です。掲載中の小説は英語でも書いているので、二ヶ国語使用という意味でバイリンガル小説としています。日本文を英訳するというよりは、小説の内容を英語で書いています。これは、表現を大切にしたいと思っているためで、読者の皆さんへ英語ではこんな言い方もありますという紹介も兼ねています。


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小説【真珠湾】第1話 ~Lost in Seven Years~ へ
  

2007年6月26日火曜日

小説 真珠湾 第3話 ~Lost in Seven Years~
Chapter 3

  6月18日、僕はホテルをチェックアウトし、浅草にあるB&Bに向かった。日本に来る前にネットで調べておいた外国人専用のミツノ屋は、雑用を手伝う事を条件に、他のB&Bよりかなり安く値段を設定していた。ただ、どんな雑用なのかとメールで問い合わせたら、「その日によって異なります」との返信。それはそうだろうと困惑したけれど、僕がミツノ屋に興味を持ったのは値段の安さだけではなく、おもしろい選択肢があることだった。「B&B or B&Dからお選び頂けます。値段は共に¥2500」。ベッド&ブレックファスト、つまり朝の軽食付きが一般的なのに、ミツノ屋はディナーを選ぶ事ができるわけで、日本の物価の高さを考えれば、夕食付きとはありがたい。僕は、ミツノ屋のB&Dプランで予約した。

  On June 18, after I checked out the hotel, I headed B&B in Asakusa. Before I had come to Japan, I found Mitsuno-Ya accepting reservations only from foreign tourists on the net. What was interesting was that Mitsuno-Ya offered a much cheaper rate than any other B&B, on one condition that those who stay would need to do some chores. I e-mailed Mitsuno-Ya about what kind of chores would be. The answer read “They differ day by day” I got puzzled thinking I bet they were but still I made a reservation anyway at Mitsuno-Ya because it gave such an appealing choice as I could either get breakfast or dinner at ¥2500. B&B comes with Bed and Breakfast in general but Mitsuno-Ya offered dinner instead of breakfast. In Japan, everything is expensive. For that aspect I knew I should definitely go with B&D.

  昼間の東京。ビルで切れ切れになってはいるけど、最高の青い空。それにしても、7年前と比べて驚くほど高層ビルが増えた。路を行き来している人たちの中にはスーツを着た多くの外国人を見かける。僕が日本に滞在していた時とは比較にならない数だ。見覚えのある地下鉄の大きな入り口を見つけた。緑の輪に千代田線のローマ字表記。網の目状に張り巡らされている東京の地下鉄は、どこから乗ろうと目的地まで必ずたどり着く。

  In the daytime of Tokyo, it was a fine day with beautiful blue sky although it was cut in pieces by skyscrapers going right through. Compared to 7 years ago when I stayed in Tokyo, a surprising number of buildings and people had increased. Many foreigners were coming and going on the road. As I walked I found a big entrance for a subway familiar to me. It indicated the Roman alphabet, Chiyoda-line, with a green ring. The subway network in Tokyo spread like mesh of net leads to a destination no matter which station you would get in from.

  切符売り場まで降り、表示されている地下鉄地図を見て、僕は思わず呆然とした。高層ビルや人だけじゃない。地下鉄の数も増えていた。網の目と言うより、迷路を上から見ている様な感じだ。しばらく凝視し、浅草を発見。荷物の中からノートとペンを出し、浅草までのルートを線で繋いで書いてみると、乗り換え地点は、灰色の線・霞ヶ関とピンク色の線・人形町のたった2回だった。いくらの切符を買えば良いのかわからず少し迷ったけれど、確かあとで精算してもらえるはずだと思い出した。7年前になんども乗った地下鉄の光景が浮かんでくる。160と印刷された小さな切符を手に、さらに階段を降りる途中で、千代田線の各駅一覧が目に飛び込んできた。これはすごくわかりやすい。霞ヶ関は左2つ目で、眼下のホームは1つ。左側に入る電車に乗ればいいんだ。この迷路には、ちゃんと親切な道案内があるわけだ。

  At the ticket-vending machines I was stunned looking at the subway map. It was not just buildings or people but the number of subways, too, had increased and it was like huge labyrinth looking down from up not just mesh of net anymore. I found Asakusa though a little later as I looked the map closely. I took out a pen and notepad and drew lines connecting one with another toward Asakusa. Then, I realized there were only two transfers at Kasumigaseki showed in gray color and Ningyocho in Pink. I got bewildered for moment as to how much of a ticket I should buy for Asakusa but my memory from 7 years ago using this subway system many times back then brought up the fact that I could adjust the fare later.
  I went downstairs further to the platform holding a small ticket printed with number 160. On the way, the horizontal list of Chiyoda line grabbed my attention navigating each station and what other lines were linked by it. How convenient it was for me to see the first transfer point, Kasumigaseki was lined up two stations left to where I was right now. There was only one platform I could see below which means I should get on a train coming on the left side of it. After all, this labyrinth had a passenger-friendly guide.

  ホームへ降りると、たくさんの人が電車を待っていた。強い風を感じる。地下鉄の入り口で見た緑の輪。サイドに緑の太線が真直ぐに走る車輌がホームへ滑り込んでくると同時にゆっくりと速度を落として停車していく。現在の時刻は10:00。どうやら、ラッシュアワーの時間帯も増えたらしい。すでに満杯の車輌に、さらに乗り込もうとする人々。日本人は、本当に我慢強い。こんな風に一日を始めて、仕事に毎日通うなんて、アメリカでは有り得ない。僕は、その電車をやり過ごした。目の前のドアは空しく閉まり、電車は来た時と同様に風と共に行った。
30分後、僕と僕のポストンバックが入り込めそうな電車は当分来ないとさとった。とりあえず、ミツノ屋に予約確認の電話を入れ、他の交通集団を聞くことにした。残された時間は、あと5日しかない。

  There were many people waiting for a train on the platform. I felt strong wind. As I saw a green ring at the subway entrance, a train with a green-painted line on the side was coming in and stopping slowly. It was 10:00am. Apparently, rush-hour time zone had widened. The people who had waited on the platform started to get on the train packed already with so many passengers. I really thought that Japanese were very patient starting their day like this and going to work. Nobody would possibly put up with this in America. The door of the train closed hollow and it left generating strong wind just as it did when it came in.
  30 minutes later, I came to conclusion that there would be no train at this point in which my big traveling bag and I could squeeze. I decided to call Mitsuno-Ya to find any other transportation to get there. I've got only 5 days left.



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